歴史研究と普及

『歴史書通信』241に掲載された、渡邉大門「市民・行政と歴史研究」を読む。なかなか示唆的である。

おもしろい結論、刺激的な結論ばかりが喜ばれるのが世の中。そうではない「地味な」研究は敬遠されがち。一般書を出す出版社も同様の反応がある
歴史で刊行を呼び込むことの功罪。
世界遺産登録を目指す自治体は多いが、増えれば増えるほど希少性が減る。また時間と共に観光客は減少し、持続性がない。研究が大きく進むというメリットもある一方で、主人公の負の側面を指摘できず美化せざるをえない状況。ただしい歴史認識が伝えにくい。

このように世間一般の歴史認識と研究者との間に大きな乖離があるのも事実。でもそれが最大限に問題になるのは、戦国武将、幕末など、一般の方々に歴史イメージが明確な場合。そうではない他の時代には、まずはそのイメージすらないこともある。
歴史の魅力を発信することの問題は、画一的ではないかも知れない。