明日はわが身?

君たちに明日はない (新潮文庫)

君たちに明日はない (新潮文庫)

大不況の風が吹き荒れる。
新聞ではほとんどいいことが書かれていない。
金、金、金。
日航の再建、小沢の政治基金問題。まったく暗い話ばかり。
これでは若者に希望を持てといわれても、土台無理な話だ。



わたしもしがないサラリーマン。
斜陽産業といっていいだろう、出版社に勤めている。

業界自体、年々売り上げは減少するが、わが社は何とか横ばいでやっている。
でも、自分の編集部門はそううまくはいかない。



先日、他部署の人が辞職勧告をされた。
といっても、日本の労働基準法では、辞職勧告は違法である。

辞職願を出させたようだが、実態は勧告である。

理由にはいろいろとあったようだが、なにぶん経営者からの言い分と、雇用者の言い分とには乖離がある。立場が違うから当然だ。




「自分には無関係。終身雇用万歳」

世の中が大きく動き、知人などでもリストラ、倒産などが現実となっていながら、やはり他人事のように感じていたが、同じ社内となれば話は別だ。




そうした昨今、本書を読んだ。

リストラ屋。「解説」にもかかれているが、実際そのような職業があるのかどうか、しらない。

ただ、経営者が眼前の「いやなこと」をそむけ、アウトソーシングしてしまう。

現代ではいかにもありそーではある。

大活字、改行だらけと、昨今の風潮にのるスタイルだから、読み進むのは軽快だ。実際、文体も軽いから、あっというまに読み終わってしまった。




昨今、文学の力が損なわれているといわれている。

しかし、小説をとおして、疑似体験できるということ。いろいろと自分の人生を考えさせるということ。

文学の力というか、小説の力を感じた。




一方、なんで小説を読んでまでリストラのことかんがえなくちゃならんのか、考えるのはシンドイじゃん。という気持ちもある。

しかし、現実と向き合うこと。

このことこそ、自分自身が成長し、強く生きていくのに必要なことなのだろう。




たかが小説、されど小説。

今後。自分がどんな本を読むべきか、考えさせる一冊だった。